あかない鍵はない
会社で、仕事の終り間際にぼけっとしていて、デスクに鍵を入れたままインロックしてしまった。
それはもう大騒ぎで、会社の社長をはじめ、上司も同じフロアのひとも総動員で、わたしのデスクをひっくりかえしたり、ひっぱったりしてくれたけれど、思ったよりデスクの鍵は頑丈だった。
おまけにデスクの中には、財布も、家の鍵も、携帯も入っていた。
一時間が経ち、鍵屋さんが鍵を開けに到着したけれども、デスクは頑として開かない。
もう一時間して、哀れデスクはドリルの強行突破に見舞われ、無事わたしは家に帰ることができた。
わたしは、といえば、そりゃあもう、恥ずかしくて申し訳なくて、ずっとうろうろうろうろしながら謝ってばっかりいたのだけれど、皆面倒がらずに(本当は面倒だったのだろうと思うけれど)、最後までああでもないこうでもないと言いながら見守ってくれて、本当にありがたかった。
鍵屋さんがドリルの強行突破を決めるまえに、自分の会社に確認の連絡を入れに立ったときなどは、社長自ら鍵屋さんのピッキングツールを拝借して、鍵穴をぐりぐりやってくれたくらいだ。
もちろん鍵はびくともしなかったけれど。
明日会社にどんな顔をしていったらいいのかと、死にそうな気持ちになっていたとき、思わぬ電話やメールがぽんぽんと入ってきた。
それはどれも全然違った人からの、全然違ったはなしだったけれど、どれも今のわたしを励まして元気付けてくれているみたいなタイミングだった。
その日、最後にかかってきた電話口から聞こえた声のトーンに一瞬はっとして、電話に出たことを後悔しかかったけれど、すぐにいつもの自分に戻って今日の大騒動を話して聞かせたとき、わたしの鍵が、開いた。
開かない鍵はない。
それは、自分が強く強く開けたいと思っていれば、いつかは開くもの。
ところでこのおっちょこちょい、なんとかならないだろうか。
随分昔から、切実にそう思っているのだけれど。
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