その光景
いつからか、わたしの頭のなかにこびりついて消えない光景がある。
時間は、薄明かりをのこした夕暮れのころ。
それは、大学から駅へと伸びた、まっすぐな道。
わたしが通っていた大学は、随分と辺鄙な場所にあった。
駅まで続く広い通りは、周りに高い建物もなく、背の低い商店や空き地、細い枝の街路樹に囲まれている。
二階建ての小さな駅が、広い空の中ぽつんと明かりを浮かべている。
学校帰りだったのか、駅に向かって歩いていると、目の前に広がる薄昏を、一本のあかく太いひかりの尾がよぎった。
夢を見ているような一瞬だった。
それは、ながくながくくっきりとした尾をひくと、ぱあっと花火のように散った。
わたしの周りにいたまばらな通行人が、一瞬あっけにとられたあと、ざわざわと騒ぎ出した光景が目に浮かぶ。
これは本当にわたしが見た風景なのだろうか?
映画で見た彗星や、たまたま本で見つけた写真、そういったものが古い記憶と混ざってしまったのかもしれない。
いままで何度もその光景が蘇ったのだけれど、随分時が経って細部があやふやになり、そのとき一緒にいた人も思いだせないままに、確かめることもせずにきた。
先日流星群のはなしをしてくれた人に、ふと思い立ってこの記憶の話をしてみた。
するとその人が、それは本当にあったことだとおもいますよ、幸運でしたね、と教えてくれた。
火球、と呼ばれる、とても明るい流れ星がある。
その特別あかるい流星をみたひとは、誰もが一瞬じぶんの目を疑うくらいの。
その人も、そんな光景にめぐり合えることを期待して、流星群がやってくるたびに出かけてしまうらしい。
長いときを経て気づいた幸運は、その真偽のほど以上にわたしをどきどきさせた。
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